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重要文化財に指定されている「黒沢ヒュッテ」という山小屋を拠点としながら、登山と制作を行う東京藝術大学山岳部。登ることと創ることが並列し、時にオーバーラップし、あるいは互いに干渉し合うその関係性は、登山と芸術がひとつのものとして結びつく可能性を示唆しています。
本展示は、2024年に黒沢ヒュッテでのアーティスト・イン・レジデンス企画に参加した6人の作品と言葉を辿りながら、「登ること」と「創ること」の関係性を双方向的に模索していきます。
太田実来|1999年、栃木県生まれ。東京藝術大学美術学部大学院工芸科所属。素材と密に関わる工芸という分野に興味を持ち、陶芸を専攻する。大学2年次に藝大山岳部へ入部。初めての登山を富士山で経験し、山と人が繋がる世界を知る。普段は旅や日常生活での記憶から、陶を中心とした様々な媒体で人の心象風景を想起させる装置となるような作品を探求している。
岡田俊|1999年、大阪府生まれ。東京藝術大学美術学部大学院彫刻科所属。自然と触れ合う時間が心から好きで、高校の頃はよく授業を抜け出して森で寝転がる日々を送っていた。大学入学を機に山岳部と出会い、山登りを始める。様々な登山ジャンルを通して山と関わり、人の在り方や自然の在り方を見つめている。また、旅を通して多様な文化に触れ、人と地球との関わりを考察し彫刻作品を制作。傍らプロカメラマンをしていた経験を活かし、写真を媒体とした表現も行っている。人物や自然、撮る対象は多岐に渡る。
河野七穂|2000年、神奈川県生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科卒業。 大学在学中に草木染めに出会い、植物から色を抽出して染める技法に関心を持つ。建築、ランドスケープ、インテリアデザインを学ぶ中で、環境との関係性を常に考えるようになり、現在は身近な植物を用いた染色を通じて、時間や変化のプロセスを重視した制作を行なっている。染色に加え、写真や木工など多様な技法を組み合わせながら作品を展開している。
佐々木舜|2005年、茨城県生まれ。東京藝術大学美術学部建築科所属。幼い頃から体を動かすことや自然が好きで、部活が終わると3時間ほど散歩やランニングをしてから家へ帰るような生活を送っていた。今でも田舎に住む地元の友達と焚き火を囲んで話したりなどする。幼い頃から今にかけて様々な形で自然と対話する中で、そこに溶け込む構造物に興味を持つ。田舎に育ったが故に身近だった自然と、建築の関係について改めて考えていきたい。
勅使河原眞千|2003年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科所属。絵画、音楽、そして彫刻に出会い身体性を纏った自分自身を認識するところから、自然体である事への憧れを持ち大学入学後山岳部に入る。自然と社会の循環、その中で出会う新しい場所を体感し、自身を更新し続けている。
原峻大|2005年、愛知県生まれ。東京藝術大学美術学部建築科所属。父の影響で幼少期から北アルプスなどで登山を始める。大学入学後、山小屋の存在や登山だけに留まらない山岳部の活動に惹かれ入部。東京で制作活動をしながら山行に参加する中で、改めて登山と山の周りでの生活の在り方に魅力を感じる。アルプスの稜線を借景としたようなついのすみかを建てようと思っている。
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